テニスラケットの選び方3

テニスラケットの選び方3

ここで使用している映像は、全てWilson,YAMAHA様からいただいたものです。
かなり昔の映像ですから、今はこれより性能を大人しめにチューンしているはずです。

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更新日 2010-09-28 | 作成日 2008-02-07

厚ラケペア.jpg

厚ラケ代表
Wilson [K]ONE 側面 30mm
Prince O3 XF Sp/Pt SILVER側面 30mm



中厚ペア-pure drive&6.1-95.psd

中厚ラケ代表 2機種
Babolat PURE DRIVE 側面26mm
Wilson [K]6.1-95 側面 22mm



うすラケ-[K]6.1 90.JPG

うすラケ代表
Wilson [K]6.1Tour-90 側面 18mm

厚ラケ?うすラケ?それとも中厚?

厚ラケのデビュー

思い返せば1988年、Wilsonがニュー・コンセプト・ラケットとしてデビューさせた厚ラケ「プロファイル」。その印象はまさに衝撃的でした。
 ツチノコ形状とも例えられた、独特のデュアル・ティパード・シェイプから成り立つ側面の厚み..95平方インチでさえ、31.7mmもあり、当てれば、たちどころに飛び出すパワー感に驚いたものです。
 厚ラケは見たまんま、厚いのが何よりの特徴ですが、同時に厚さから来る重さの呪縛から逃げたいために、軽量化しているのが特徴です。実は、この軽量化達成のためのノウハウが厚ラケの性格を支配してしまうのですが...。
 厚く作ったラケットは、基本的に硬くなります。戦国の武将「毛利元就」の物語「三本の矢」にもあるように、一本で折れる矢も、三本まとまると折れなく硬くなります。厚ラケはこの硬く作ることが理論の始まりで、硬く作るためには当時、二つの方法しかなく、A)高価ですごく硬い金属系素材を使う。B)加工性に優れ、比べればまだ安価な高弾性カーボンを使って、厚いラケットを作るか..のどちらかでした
 当然、選ばれたのがその厚く作る方法だったわけですが、その理論と言いますと、こんな具合です。通常、ラケットにボールが当たると、一度、後方にムチのようにしなり、それがまた前におじぎして、さらにまた後方に反り返り、また前へと行ったり来たりを繰り返します。この振幅を数値で表すと、振動周波数と言います。そのいったりきたりの周期が短いのを硬い(振動周波数の高い )ラケット、ゆっくり行ったり来たりするラケットを柔らかい(振動周波数の低い )ラケットと言えるわけです


 昔のウッドのラケットは毎秒80回くらいの振幅(80Hz)。うすラケなら130Hz前後 、中厚で170Hzぐらい、厚ラケだと毎秒200回以上の振幅(200Hzオーバー)です。
 結果、通常のラケットだと、大きく後方にしなってまだ戻りきらないうちに、ボールは面から離れていってしまいましたが、厚ラケだと振動数が高いことにより、一瞬でしなったかと思ったその刹那、戻りきったところで、ボールが離れていくため、エネルギー効率が無駄なく伝えられます。厚ラケのパワーの秘密は、実はこうしたテクノロジーの賜物なんです。
 余談ですが、2001年に、HEAD社からデビューした理論、"Intellifiber"は、圧電素子「ピエゾエレクトリック・マテリアル」を用い、しなろうとした時の機械的エネルギーを、電気的エネルギーに変えて、瞬時に硬くし、復元させようとしたものです。硬くするための第三の方法だったわけですが、まだまだ、テニスラケットの技術進化からは目が離せませんね。
 つけくわえますと、こうした硬くするための方法としての厚ラケだけに、根本的にその相反する要素として、球持ち感はどうしても悪くなってしまうわけです。今日、X-CELやNXT等がタッチ感重視のプレイヤーに重宝されるのは、実はこうしたネガを潰すためと考えられます。


まず、厚さで3つに分類します。

これといった厳密な決まりはないですが、便宜上以下の3つに分けて説明します。
厚ラケ........側面の最大厚みが28mm以上あるもの
中厚ラケ....側面の最大厚みが25mm前後あるもの
うすラケ....側面の最大厚みが21mm以下のもの
一昔前は22mmを中厚と呼んでいましたが、今は22mmでさえ、けして厚い方ではないので、少し厚い方にシフトしている傾向があり、以前よりうすラケの基準は少し厚くなったと考えます。

厚ラケのメリット、デメリットは?



まず、上のレギュラーラケットと比較したパワーの差をご覧下さい。
一目瞭然、同じところに弾ませても、格段にボールの弾きがいいですよね?さらに、画像はありませんが、サイド方向に外れて当たった場合にも、その優れた捻れ剛性により、ブレにくく結果、面安定性が高まります。もちろん、縦方向にもスィートエリアは確実にアップします。要するに、厚ラケはあなたを助けようとすごく努力してくれているんです。これが、実は自分でガンガン振り回したい方にとって 大きなお世話になりかねない欠点ともなりえます。

厚ラケは振動がすぐおさまる

さらに厚ラケは、振動を早いうちに収束する傾向も持っています。固有振動数が高いことによるんですが、実際の衝撃周波数は一瞬、高いピーク値を記録し、瞬時に減衰します。

しかし、実際は厚ラケが軽量化されていることによる、相手方ボールをヒットした際の、慣性の少なさからくるブレは絶対的に起こっているはずですから、厚ラケ=振動はないと信じ込むのもどうかと思います。うすいラケットそれ自体は、根本的にはバイヴレーションが長く続くものの、重さ故に相手からのボールに弾き返されにくいはずです。

厚ラケとうすラケどっちが硬いの?

よく、厚ラケを柔らかいラケット、うすいラケットを硬いラケットと
評する方がいます。なるほど、手応えだけみたら、ずしっとボールの重さを感じるうすいラケットより、当たったのかどうかを感じ取る間もなく、ポーンと弾いていく厚ラケこそが打球感は少なめ、あるいは手応えが希薄ですから柔らかい打球感というのは納得します。しかし、物理学的には全くの逆で、その固さを感じさせているうすラケこそが、実際はしなっている柔らかいラケットであり、柔らかく感じさせる厚ラケこそが、はっきりと硬く作ってあることによる効果なんです。それは、手前どもが用意するラケット診断計測器R.D.Cでも、「しなり」の数値としてはっきり現れます。



例として、DUNLOP社のDiacluster7.0がFLEX値76、Wilson社の[K]ONEがFLEX値73、そこそこ厚い中厚のBabolat社PURE DRIVEは、69。うすくてしなる代表として、YONEX社のRD Ti22が FLEX値53といえば、おぼろげながら理解いただけるでしょうか。

厚ラケを使うべきプレイヤー

ボレーがなにより大事な方
力の不足をラケットで補いたい方や、故障気味の御年配
振り回すより、ある程度当てに行くスィングの方
疲れるのを極力嫌うプレイヤー
ゆるく張って、乗っかり感を引き出したい方
軽いのがなにより大事な方
フットワークに難のあるプレイヤー

うすいラケットを使うべきプレイヤー

ストロークで引っぱたくのが何よりの方
自分で振ることに生き甲斐を感じる方
これから、テニスを上達させていこうという発展途上の方。
ソフトテニス後衛出身や、野球、バドなど素人よりは格段にスィング速度の速い方
芯に当てたか、芯を外して当てたのかを、逐一実感したい方
スピン命のプレイヤーで、ボールを手元に長く留めたい方
ある程度の重さがないと、テニスを実感できない方
かなり、硬く張ってボールを食い込ませたい方
厚ラケだとサイドの厚みにひっかかってしまう方

なぜ選手は飛ぶラケットを使うの?

必ずしも、絶対とはいえませんが、上に述べた傾向は遠からず当たっていると思われます。そうすると、不思議なのはBabolat社のPURE DRIVEみたいに、厚くて高反発なラケットを、どうしてまたグランドスラムの選手やハードヒッターが使っているのって疑問が湧くと思いますが、それを語るにはそのプレイヤーのスイング速度がまたまた問題になってきます。
 簡潔に言いますと、プレイが変わっちゃったんです。昔のボルグ、マッケンロー時代のように、ストロークを何度も繰り返す意識がないんですね。相手をワイドに振って、オープンコートにエースを決めるってのがセオリーになりましたから、今は、エースの取れるラケットが選手には重宝される傾向があるんです。ハイパワーなラケットを、よりハードに引っぱたく選手が使用する。一見矛盾する使い方ですが、厚めであることがフレームの剛性を上げ、うすいラケットに比べ、叩いた時により強くボールを潰せるのです。
 この流行に、一般ピープルがあやかろうとするんで問題が出るんです。ある程度、飛ぶラケットをフルに使いこなすには、それ相当のスィング速度を与えて始めて発揮できるわけです。
 あまり、ガンガン振り回さないプレイヤーなら、厚ラケまたは中厚のパワーに頼るべきですが、それを使って打った結果が、飛びすぎない、あるいはほどよく飛ぶとのバランスを検証してみる必要がありますね。

厚ラケはオートマ。うすラケはマニュアルシフト

誰にでも、簡単にテニスを楽しませてくれる厚ラケはいわばオートマ。振ることにある程度の技術やパワーを要求する、七面倒くさいのがマニュアルシフトと言い換えることが出来ると思います。中厚がセミオートマってとこでしょうか。

総括

 そこそこの御高年で、体力の衰えも認め、もはやビュンビュン振り回すなんてちょっとと思えましたら、迷わず簡単な厚ラケ。ジュニアやこれからテニスの甘いも酸っぱいも味わいたいとか、険しい道を歩きながら、あえてゆっくりではあっても本物の技術を習得したいのであれば、そのパワーに応じて、そこそこ薄めなラケットを選ばれればいいと思います。
 勘違いして欲しくないのは、飛ばなければ飛ばないほどよしとするエネルギー非効率な考え方です。世界で見ても、骨格のきゃしゃな日本民族こそが、実は厚めなラケットのパワーを使いこなすべきであり、その選択のスタートは飛ばないラケットから始めるのではなく、今は、飛びのよいラケットからスタートして技術の向上に合わせ、少しづつパワーの少なめなラケットを吟味してみるという探し方が時代にあった選び方なんではないでしょうか?

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