硬式テニスラケットの選び方を説明します-その1

 
この章では、厚さ、面積がラケットにどう影響するかの話をします

テニスラケットを選ぶための9つの要素

以下の順で解説します。
 
1 ラケットの厚さ(固さ)
2 ラケットのフェィスサイズの大きさ(面積)
3 ラケットの重さとバランス
4 フレームの形状(全体と断面形状)
5 ストリングパターン
6 ラケットの長さ
7 グリップの太さ
8プレイヤーが求める物
もちろん、これのうちの何かで完全に定義づけることは無理で
いくつかの要素が互いに影響し合いますことをご理解下さい。

ラケット選びの考え方

ハウディでは、よくメーカーさんが使う初心者用、中級者、上級者用という分類を嫌います。その理由は一概に初心者だからラケットを振らないとは限らないからです。今日初めて硬式ラケットを握るあなたが、ソフトテニスをやっていたとか、野球のピッチャーだとか、バドミントンをやっていたとしたら初心者なのにラケットを振り回せる可能性は高いでしょう。
また反対に20年以上テニスをしているベテランでも、必ずしもラケットを高速で振り回すとも限りません。コントロール主体でひたすら精度良く返球する、丁寧に球運びをするプレイヤーなのかもしれません。
元ハードヒッターであっても年齢を重ねて、前程は振れなくなっていることもあります。
それを全て初心者〜中級〜上級というくくりでラケットを絞り込むのは乱暴すぎると思うのです。
 
ただそれは便宜上やむをえないことであり、その通りにドンぴしゃの方はともかく、問題はこんな区別にピッタリ収まり切らないプレイヤーの場合です。又は、収まりたくなくて努力している方。
 プリンス社がPOWER LEVELってラケットの性能指標を発表していることに注目です。これは、ラケットの面積、重さや固さや長さ、スイングバランスから、ラケットのパワーを表しています。軽く参考にはなると思われます。

HEADのControl Power Indexもパワーの指標なんですが、こちらは残念ながら100づつの分類なので、切り捨て切り上げをしてるようで、まさかコレとコレが一緒の数値なの?と突っ込みたくなるので目安にするにはあまりにアバウトです。
要はラケット選びに一番重要と思われるのは、あなたがどれくらいラケットをスィングできるかってことです。振れれば、振る程に必ずそこにパワーが産まれますよね?そのためラケットにはパワーをさほど求めないでしょう。振れてない方はラケットからパワーを与えてもらう必要があるからパワーのあるラケットを入手しましょう。
右上の表をご覧下さい。


参照図..左)PrinceのPOWER LEVEL      右)HEADのControl Power Index
 
では、まず最初にどう選ぶべきかを一言で簡潔に話します。

急ぎの方は、これで結論づけても結構ですがもう少し
聞いておきたいって方のために次の章が始まります。最初に言っておきますが相当にDEEPな解説です。
 
あまり使いたくない表現ですが、いわゆる初心者、まだテニスに不慣れな方なら簡単なラケット(オートマに相当)から初めて行き
打てるようになってきた方は、もう少し、自分の力で勝負できる
マニュアルならぬ難しい系にシフトしていくという考えでいいと思います。
 
そこに、年齢や、練習時間をどれだけ増やせるか、体力は有り余ってるのかなどを考慮し、現在よりもっと上手くなっていけると予想される発展途上と考えられる方はよりマニュアル指向のラケットに!
反対に、疲れを感じ始め、昔程には練習もできていない、速いボールに目がついていかないなどと感じる方は、今後どんどん上手くなっていくと言うより、昔をキープできればいいと考えるのもアリなのかなと。それならプライドは引っ込め、素直にラケットのアシストを享受しようというオートマ指向に考えを持たれるのが懸命ではないでしょうか?

どうやって自分にあったラケットを選ぶの?

あなたがテニスラケットを選ぶのに迷ったとき、教えてもらう方法はいくつもあります。テニスの上手な友人に、または先輩に聞く。教えてもらっているテニスのコーチに聞く。雑誌で情報を漁る。ネットで情報を収集する。どれも外れとは言いません。でも、必ずあっているとも言えません。それは、あなたのテニスをよく把握できていないかまたはラケットの正しい知識を持っていないかもしれないからです。自分の好みを人に押しつけるアドバイスもあり得ます。特に雑誌やネットからの情報は、どんな人がどのレベルで評価しているかがよくわかりません。あなたとまったく違う観点から褒めたりけなしていることもあり得ます。
 

 はっきりいうと、ラケットとのマッチングには誰も責任を持てないんです。なぜならラケットの特性で全てが決まるわけでなく、プレイヤーの運動能力も加味した感性が絡んでくるからです、合う合わないは、宗教レベルであなたを信じ込ませるか また合っていると思えるラケットに出会えるまで探し続けるしかありません。それは、極めて遠い道のりのような気もします。できるならそれが解るだけの選別能力をあなたの腕が持ってくれればいいんですが、時間的に又はレベル的にそれを困難と諦めそうな方なら是非このコラムを読んで下さい。究極の答えにはならないでしょうが、参考程度にはなれるかと思います。
 

僕にあったラケットを教えて?

お店でよくお客様から聞きがちな言葉ですね。訪ねた店の店員さんがあなたの硬式テニスの経験だけを聞いて、即ラケットを選別して薦めてくるようなお店ならもう信用はできないでしょうね。
たぶん、その時の店員さんの判断材料はあなたが、「初心者」か「中級者」か「上級者」かだけを見ている可能性が高いです。他にもっと聞かなければいけないことがあるはずなのに...

それは、硬式テニスにこだわらず、今までやってきたスポーツの履歴です。
まぁ、水泳、乗馬、剣道、体操などは正直その経験がテニスにどう役立つかは困りますが、投げるとか道具を振るという事をやっていたなら既に硬式テニスの世界でも素人ではないはずです。
いいアドバイスをするためには、お客様自身をよく知るところからスタートします。
これは1日に100人もの相手をこなす都内の量販店には求めることが間違いでしょう。
聞き出せば、聞き出す程ラケットはどんどん絞られてきます。
そこにあなたのしたいテニスまたは、指向(簡単に言えば、ガンガン打っていきたいのか、丁寧に見栄え良く打っていきたいのか)を打ち明けて頂ければ、長くラケットコーナーに携わる店員ならばさらに薦めるべきラケットが絞り込めます。
 右上に続く

まぁ、真実を言うなら始めたての男性には、技術云々の前にガンガン打っていきたい指向の方が特に多くて、本当ならガンガン打つ前にもっとゆっくりスィングすることから始めた方が上達は早いのにという気持ちはなくもないんですが、これは性格なので、その方の気晴らしも兼ねてのテニスとなるとそこには口は挟めません。
 
ラケット選びは、確かに難しいです。某メーカーさんの調査では、都内のプレイヤー200人にアンケートを取った結果、8割の人がよく分からず購入しているとのこと。
 
お店ももっとアドバイスなり勉強して頑張らなければいけませんね。
 
選び方には、その方がどのレベルを目指すかによっては、あえて難易度の高いラケットを選んでもらうというハード指向もありますが、基本は簡単に楽に上手になれるラケットを選んでもらうのが一番と考えます。
 
もちろん、手に入れた一本が使い始めから最後まで愛機でいられるのは少し期待しすぎです。
先ずは簡単なラケットから初めて、自分の技術の向上にあわせ、少しづつレベルの高いラケットに買い直すってのが、一番お薦めな方法です。
 
最初にお断りしておきますが、フレームの厚みや面積などはどうあがいても「物理的特性」は変えられませんので、特性には支配されます。厚いラケットよりもっと飛ぶ薄いラケットは存在しませんし、小さい面積で大きいラケットよりスィートエリアが広いのは求められません。
それならなぜグランドスラムであんなに高速スイングをするのに厚ラケを使ってる選手がいるの?って質問が来るなら、それは彼らの高い打点とボールを潰せる技術があっての話です。
一般的スイングのプレイヤー限定で話せば、およそ物理的特性からは逃れられません。
しかし、プレイヤーが感じる「感性」(..もっとボールを捕まえたいとか、スピンをかけたい等)は重さやバランス調整、糸や張り方、テンションなどで少しは手を加えられます。あなたの求める「感性」を理解してくれるお店なら任せて安心ですね。

1 ラケットの厚さ(固さ)

とは言いましたが、この厚さを一番に上げたのにはちゃんと理由があります。
ラケットを特徴付けるのに、最もこの厚さの要素が大きいからです。かつわかりやすい。よく、テニスの上手な方に限って、いいや、こっちの方が「薄いけど飛びがいいよ」と口にしますが、薄い方が厚いラケットより飛ぶというのは物理の法則から反しています。しいていえば馬力80ps代の車が320psの車より速いわけ有りませんよね?異論があってもそれは主観にしか過ぎません。もちろん、薄めなわりに飛びがいいとか、厚い割に飛びが抑えられるとかの評価は存在しますが、薄いラケットに厚いラケットがパワーで負けることはないのです。
 
一番手っ取り早いのは厚さ比較でそのラケットのパワーを知ることです。
ラケットを側面から見たときの横幅を背幅又はフレーム厚と呼びます。
要は側面厚みのことですね。四つの例を薄い方から並べました。


これが
薄い(しなりやすい)<厚い(しなりにくい)に従ってパワーは上がっていきます。
全てに当てはまりませんが、95%以上の 高確率でこの式は当てはまります,
飛ばない方がいい→パワーの控えめなラケット→薄ラケ(22mm以下)
飛ばしたい→パワーのあるラケット→厚ラケ(26mm以上)
中厚はその間の特性と思ってもらえばいいでしょう。(23〜25mm)
 
ではわかりやすくチャートにします。

これに、面積や重さ、フレーム形状などが影響してきます。
もう少し、細かく説明しましょう
厚ラケは下記のメリットデメリットがあります
飛びが良い、ボールがコートの奥まで飛ぶ
フレームの端に当てても飛びが良い、ダブルス、ボレーヤーには良い
 =スィートエリア(当てた時に飛びの良いゾーン)の大きさは厚ラケの独壇場
俺、こんなパワーボールが打てるんだと機嫌良くなるくらいスピードがもらえる
疲れず、省エネテニスがしたい
フットワークに難のあるプレイヤー
×固いために反発が早いので、球離れが早い、打感やタッチ感が希薄
    体重の乗ったボールが打ちにくい、厚ラケで打ったボールは返しやすいとも言われ      ます
×薄ラケより固めなカーボンを使用しがち..手首肘に負担は大
×斜め上に振ろうとすると空気抵抗が生ずる..これもストローカーにはやや減点
×飛びが良いので当てるだけのスイングをしてしまうとメリットは半減
結果、車に例えるならオートマチック、ラケットの助けを存分に借りて快適な上でプレイが出来るラケットです!その分振りたがりとは相性は悪いです

では薄いラケットのメリットデメリットはどうでしょう?
飛びは抑えめ、その分コントロールは良い
精緻な打球感を濃密にたっぷり味わえる、どこに当たったかも感じ取れる
柔らかくしなりがあるので、ボールが乗っかる〜スピンがかかる
    ...体重のかかった重いボールを打ちたいならコレです
ストロークで引っぱたくのが何よりの方、振ることに生き甲斐を感じる方
打った分だけがリニアに飛ぶから余計なことをしない
振りの早いストローカーには喜ばれる特性
芯に当てたか、芯を外して当てたのかを、逐一実感したい方
厚ラケだとサイドの厚みにボールがひっかかって明後日の方に飛んでしまう方
×フレームの端に当てると途端にミスショットになりがち〜スィートエリアはさほど        大きくない〜コレと引き換えに打感をたっぷりもらってるわけです
×厚ラケよりねじれが生ずるので、ボレーのアシストは少なめ..ボレーヤー向けではない..スィートエリアは厚ラケより小さいとご理解下さい。
結果、車に例えるならマニュアル、球速を出すのも深く飛ばすのも自分でやらなきゃいけません。でもそれが振る喜びと満足につながるなら相性はいいでしょう。
※メーカーの中でBabolat社はPURE AERO(厚ラケ)をスピンラケットと分類しますが
僕の言う、厚ラケの球離れの早さを封じ込めるトップクラスの人が打つならその評価も認めますが、サンデープレイヤーレベルなら乗っかるラケットの方がスピンはかかる道理です。フレームが空気抵抗を軽減する作りなのは認めますが...
中厚ラケットはその間の特性と理解下さい。
それを知って頂く動画を用意しました。
厚ラケとレギュラーラケットのパワー差
厚ラケとレギュラーラケットのスィート・エリアの差
一目瞭然、同じところに弾ませても、格段にボールの弾きがいいですよね?さらに、画像はありませんが、サイド方向に外れて当たった場合にも、その優れた捻れ剛性により、ブレにくく結果、面安定性が高まります。もちろん、縦方向にもスィートエリアは確実にアップします。要するに、厚ラケはあなたを助けようとすごく努力してくれているんです。でもこれが、自分でガンガン振り回したい方にとって 大きなお世話になりかねない欠点ともなりえます。
 

厚ラケ?うすラケ?それとも中厚?

ここからはラケット選びに関係ない話なので、時間に余裕がない方は飛ばして下さい。
厚ラケをより深く知って頂くディープなコーナーです。

厚ラケのデビュー

思い返せば1987年、Wilsonがニュー・コンセプト・ラケットとしてデビューさせた厚ラケ「プロファイル」。その印象はまさに衝撃的でした。
 ツチノコ形状とも例えられた、独特のデュアル・ティパード・シェイプから成り立っ側面の厚み..95平方インチモデルでさえ、31.7mmもあり、当てれば、たちどころに飛び出すパワー感に驚いたものです。110インチモデルの最大厚は39mmにも!!
 厚ラケは見たまんま、厚いのが何よりの特徴ですが、同時に厚さから来る重さの呪縛から逃げたいために、軽量化しているのが特徴です。実は、この軽量化達成のためのノウハウが厚ラケの性格を支配してしまうのですが...。
 厚く作ったラケットは、基本的に硬くなります。戦国の武将「毛利元就」の物語「三本の矢」にもあるように、一本で折れる矢も、三本まとまると折れなく硬くなります。厚ラケはこの硬く作ることが理論の始まりで、硬く作るためには当時、二つの方法しかなく、
A)高価ですごく硬い金属系素材を使う。
B)加工性に優れ、Aに比べればまだ安価な高弾性カーボンを使って、側面厚の厚いラケットを作るか..のどちらかでした
 当然、選ばれたのがA)カーボンで厚く作る方法だったわけですが、その理論と言いますと、こんな具合です。通常、ラケットにボールが当たると、一度、後方にムチのようにしなり、それがまた前におじぎして、さらにまた後方に反り返り、また前へと行ったり来たりを繰り返します。この振幅を数値で表すと、振動周波数と言います。そのいったりきたりの周期が短いのを硬い(振動周波数の高い )ラケット、ゆっくり行ったり来たりするラケットを柔らかい(振動周波数の低い )ラケットと言えるわけです
Wilson-マッチドフレックス効果,
YAMAHA-ハイレゾナンス理論
 昔のウッドのラケットは毎秒80回くらいの振幅(80Hz)。うすラケなら130Hz前後 、中厚で170Hzぐらい、厚ラケだと毎秒200回以上の振幅(200Hzオーバー)です。
 結果、通常のラケットだと、大きく後方にしなってまだ戻りきらないうちに、ボールは面から離れていってしまいましたが、厚ラケだと振動数が高いことにより、一瞬でしなったかと思ったその刹那、戻りきったところで、ボールが離れていくため、エネルギー効率が無駄なく伝えられます。厚ラケのパワーの秘密は、実はこうしたテクノロジーの賜物なんです。
 余談ですが、2001年に、HEAD社からデビューした理論、"Intellifiber"は、圧電素子「ピエゾエレクトリック・マテリアル」を用い、しなろうとした時の機械的エネルギーを、電気的エネルギーに変えて、瞬時に硬くし、復元させようとしたものです。硬くするための第三の方法だったわけですが、まだまだ、テニスラケットの技術進化からは目が離せませんね。
 つけくわえますと、こうした硬くするための方法としての厚ラケだけに、根本的にその相反する要素として、球持ち感はどうしても悪くなってしまうわけです。今日、X-CELやNXT等がタッチ感重視のプレイヤーに重宝されるのは、実はこうしたネガを潰すためと考えられます。


まず、厚さで3つに分類します。

これといった厳密な決まりはないですが、便宜上以下の3つに分けて説明します。
厚ラケ........側面の最大厚みが28mm以上あるもの
中厚ラケ....側面の最大厚みが25mm前後あるもの
うすラケ....側面の最大厚みが22mm未満のもの
一昔前は22mmを中厚と呼んでいましたが、今は22mmでさえ、けして厚い方ではないので、少し厚い方にシフトしている傾向があり、以前よりうすラケの基準は少し厚くなったと考えます。
 

厚ラケは振動がすぐおさまる

さらに厚ラケは、振動を早いうちに収束する傾向も持っています。固有振動数が高いことによるんですが、実際の衝撃周波数は一瞬、高いピーク値を記録し、瞬時に減衰します。
YAMAHA-振動減衰
しかし、実際は厚ラケが軽量化されていることによる、相手方ボールをヒットした際の、慣性の少なさからくるブレは絶対的に起こっているはずですから、厚ラケ=振動はないと信じ込むのもどうかと思います。うすいラケットそれ自体は、根本的にはバイヴレーションが長く続くものの、重さ故に相手からのボールに弾き返されにくいはずです。手首や肘にダメージを与えるのはオシロスコープに表示される振幅巾と時間の総面積だと聞いています。

時間は早く収束しても、高周波数フレーム故、振動は高まっている

これについては、僕自身の見解は、厚ラケに完全なる振動の少なさを求めるとちょいと危険と思っています。それは全ては厚ラケがいわゆる薄いカーボンの最中の皮で作られたがゆえに
薄ラケより、柔軟性の乏しい高反発素材を採用している事から来る数少ないネガと考えています

厚ラケと薄ラケどっちが硬いの?

よく、お客様の中に厚ラケを柔らかいラケット、うすいラケットを硬いラケットと
評する方がいます。なるほど、手応えだけみたら、ずしっとボールの重さを感じる薄いラケットより、当たったのかどうかを感じ取る間もなく、ポーンと弾いていく厚ラケこそが打球感は少なめ、あるいは手応えが希薄ですから柔らかい打球感というのは納得します。しかし、物理学的には全くの逆で、その固さを感じさせているうすラケこそが、実際はしなっている柔らかいラケットであり、柔らかく感じさせる厚ラケこそが、はっきりと硬く作ってあることによる効果なんです。
打感は人様々なため、お店ではラケットを物理的特性から評価します。
厚ラケはしなりにくいので固いラケット
薄ラケはしなりやすいので柔らかいラケットと分類させて下さい。


もういっちょう、当店の計測器動画です

動画では、しなるって感覚がもう一つ分かりづらいですね
それは、手前どもが用意するラケット診断計測器R.D.Cで、「しなり」の数値としてはっきり現れます

例として、DUNLOP社の厚ラケ代表LX-1000がFLEX値77、Wilson社のBLADE98 V8.0 16×19がFLEX値60、あのCLASH V2.0はさすがの55。人気のBabolat社PURE DRIVE2020は、67。うすくてしなる代表として、昔のYONEX社のRD Ti22が FLEX値53、RD Ti24が FLEX値55だったといえば、おぼろげながら理解いただけるでしょうか。今の01 PERCEPT97はFLEX値58です。実は柔らかいんです

なぜ選手は飛ぶラケットを使うの?

必ずしも、絶対とはいえませんが、上に述べた傾向は遠からず当たっていると思われます。そうすると、不思議なのはBabolat社のPURE DRIVEみたいに、厚くて高反発なラケットを、どうしてまたグランドスラムの選手やハードヒッターが使っているのって疑問が湧くと思いますが、それを語るにはそのプレイヤーのスイング速度がまたまた問題になってきます。
 簡潔に言いますと、プレイが変わっちゃったんです。昔のボルグ、マッケンロー時代のように、ストロークを何度も繰り返す意識がないんですね。相手をワイドに振って、オープンコートにエースを決めるってのがセオリーになりましたから、今は、エースの取れるラケットが選手には重宝される傾向があるんです。ハイパワーなラケットを、よりハードに引っぱたく選手が使用する。一見矛盾する使い方ですが、厚めであることがフレームの剛性を上げ、うすいラケットに比べ、叩いた時により強くボールを潰せるのです。
 この流行に、一般ピープルがあやかろうとするんで問題が出るんです。ある程度、飛ぶラケットをフルに使いこなすには、それ相当のスィング速度を与えて始めて性能が発揮できるわけです。言い換えるなら、あまり上手でなかったときに助けてくれた厚ラケが、相応に振れるようになってきたときに、今度は飛びすぎを抑えるための技術を要求されるようになってくるんです。
 あまり、ガンガン振り回さないプレイヤーなら、厚ラケまたは中厚のパワーに頼るべきですが、それを使って打った結果が、飛びすぎない、あるいはほどよく飛ぶとの相性を確認してみる必要がありますね。僕は、ボールを潰しきれない中途半端なプレイヤーが、厚ラケを使ってハードに振ろうとすると、本来そんなかけないでもいい余計なスピンをかけることになって非効率と考えます。
※2023/11/16に以下を加筆
 (近年、ナダルのような高回転型スピンをかけず、もっとフラット系スピンを多用する次世代型選手の台頭もあり、選手が厚ラケを使っていた時代から、もっと中厚から薄ラケにシフトしていると感じています。)

厚ラケはオートマ。うすラケはマニュアルシフト

誰にでも、簡単にテニスを楽しませてくれる厚ラケはいわばオートマ。振ることにある程度の技術やパワーを要求する、七面倒くさいのがマニュアルシフトと言い換えることが出来ると思います。中厚がセミオートマってとこでしょうか。

総括

 そこそこの御高年で、体力の衰えも認め、もはやビュンビュン振り回すなんてちょっとと思えましたら、迷わず簡単な厚ラケ。ジュニアやこれからテニスの甘いも酸っぱいも味わいたいとか、険しい道を歩きながら、あえてゆっくりではあっても本物の技術を習得したいのであれば、そのパワーに応じて、そこそこ薄めなラケットを選ばれればいいと思います。
 勘違いして欲しくないのは、飛ばなければ飛ばないほどよしとするエネルギー非効率な考え方です。世界で見ても、骨格のきゃしゃな日本民族こそが、実は厚めなラケットのパワーを使いこなすべきであり、その選択のスタートは飛ばないラケットから始めるのではなく、今は、飛びのよいラケットからスタートして技術の向上に合わせ、少しづつパワーの少なめなラケットを吟味してみるという探し方が時代にあった選び方なんではないでしょうか?
 
言い換えるなら、受験の参考書選びにも例えられます。
頭が痛くなる程難しい参考書を買って、あまり開かないうちに埃をかぶらせるより
そこそこ理解しやすい、簡単な参考書から始まって、物足らなくなってきたら
もっとレベルの高い参考書に買い直しましょうよってお話でした。
 
以上でフレームの厚さがもたらす話はおしまいです。

2 ラケットのフェイスサイズの大きさ(面積)

この大きさを2番に上げたのにも理由があります。
ラケットを特徴付けるのに、2番目にこの大きさの要素が大きいからです。
では、最初はわかりやすくチャートから


もちろん、これに重さや形状、ストリングパターンなどが影響してきます。
 
物理の法則「たわみ量は長さの二乗に比例する」を思い出して下さい。大きければ大きい程、パワーと安定性は手に入り、ちいさければ小さい程、振るのには向いてますが、特に芯を外したときには悲惨な結果が待っています。よくグランドスラム選手が面積97以下のラケットを使ってるじゃんと言われますが、あの人たちは100球ストロークして、ほんの2,3球しか芯を外さないので小さいデメリットを感じない人達なのです
下記にその説明図を

少し大きいだけで、縦糸の長さは1cm以上も変わる。たかが1cmでもたわみの二乗に比例すれば、球飛びははっきりパワーの差として現れます。
面積が小さい(ブレやすい)<大きい(ブレにくい)に従ってパワーは上がっていきます。
全てに当てはまりませんが、かなりの高確率でこの式も当てはまります,
飛ばない方がいい→パワーの控えめなMID→小面積(85〜99平方cm)
飛ばしたい→パワーのあるラケット→デカラケ(103平方cm以上)
中間の大きさのMIDPLUSはその間の特性と思ってもらえばいいでしょう。(97〜102平方cm)
 
もう少し、細かく説明しましょう
面積の小さいラケットは下記のメリットデメリットがあります
振り抜きが良い、ボールがコートに納まる(あまり飛びが良くないの言い直しです)
コントロール性が高い
打った打球の情報が精緻に伝わる、ストローカーには良い
芯で捉えた時の、喜ばしい伝達は小さいラケットの独壇場
芯で捉えた時の、快音が魅了する。
振った分と、飛びの結果がリニアである
フラット系プレイヤーとは相性が良い
フットワークに自信のあるプレイヤーならメリットを引き出せる
×ミスは多くなる、端に当たったときの球は大きいラケットよりブレやすいから
×面安定性は低い
×ストリングの有効長が短いので、ボールをストリング面に深くホールドさせるためには
  大きいラケットより、さらに高速で振ることが求められる。
×攻撃には良い反面、守備にはやや期待できない。
×芯を外して打つことが多いなら、今は小さいラケットはパスしましょう。
×スイートエリアを外して打つと、大きいラケットよりも手首肘に負担は大
×ラケットスポーツの未経験者には、この面積の中にボールを捉えるのが難しいでしょう。
×疲ることが要求され、疲れを覚えるプレイヤーや省エネテニスには向かない。
×フットワークが衰えると、相性は悪くなってくる
×小さい分、球拾いはフレームにボールがあまり多く乗らない
 
 
結論、面積の小さいラケットは車に例えるならマニュアル、ラケットの助けをあまり借りずに自分のパワーでプレイが出来るラケットです!その分振りたがりとは相性は良いです
ご自分で試打してみて、どちらがあってるかの答えを出せる方は、あんまりサイトの記事なんて参考にする必要はないと思います。問題は、まだ始めたばかりとか、動的視力や振りすぎとかセンスの問題もふくめ、当たり外れのバラバラなプレイヤーです。
 ご自分のラケットのガット面を見て下さい。フレーム際にまでボールのメルトンがこびりついてるようであるなら、あなたには小さい面積ラケットの相性は今ひとつと思われます。

では面積の大きいラケットのメリットデメリットはどうでしょう?
飛びは良い、パワーがある、その分コントロール性は若干劣る
精緻な打球感はあまり期待できない、どこに当たったかも感じ取りにくい

  • ...打感はややぼやけている

小さいラケットより端がブレないので〜スピンがかけやすい
スィートエリアは大きい〜フレームの端に当ててもミスショットになりにくい

  •      〜コレと引き換えに打感はややぼやけてきます。

ストリングの有効長が長いので、振ったときにボールはストリング面にホールドしやすい
結果...小さい面積のラケットより、振る速度は要求されない。
攻撃型でも技量があれば使えるが、守りに入るなら頼もしい!
打った分と結果の飛びが密にリンクしない
スイートエリアを外して打っても、小さいラケットよりも手首肘に負担は少ない
   ...テニス肘とかで痛みに泣いてるなら、大きいラケットに移行すべき
芯を外して打つことが多いなら、そんな方のために大きいラケットが開発されました。
始めたてであればあるほど、この大きいと言うことは助けになります。
振りの遅いストローカーには喜ばれる特性、ボレーヤーならメリットだらけ!
×芯に当てたか、芯を外して当てたのかが、いまいち伝わってこない
×ストローカーが高速で振ろうとすると、大きさ故にもう一つ振りにくい。
×例えば、ローボレーなどの時、フレームが大きいが故に、スィートスポットに捉えにくい

  • .....それでも、大きいスィートエリア故にほぼ同等の弾きはするが

×大きい分、球拾いの際はフレームにボールが多く乗る
 
結果、車に例えるならオートマ、ラケットのアシストを快く受け取り、自分が振り回す快感より
ラケットでゲームを優位に進めようとの意識があるならお薦めです!
 
中くらいの大きさのラケット(MIDPLUS)はその間の特性と理解下さい。
 
 

では、なぜに大きい面積はプレイヤーを助けてくれるかの説明を
これを考えるときにあなたの握るグリップを中心として、長さ方向の軸安定性と、幅方向の面安定性とに分けて話さなければいけません。

まず、最初の長さ方向の軸安定性です。

これはボールを捕らえた時にグリップ部分を支点として、フレームが後方にはじき返されようとすることに、どれくらいラケットが耐えてくれるかなんですね。たまに、TOP部とEND部に重りを内蔵したラケットが発売されますが、
これについては、フレームの面積よりも、重さとバランス、慣性力の要素が強いので言及しません。
 しかし、面積がでかい=張ってあるストリングも長いということになります。長いストリングは、それ自身が持つ、たわみ量の特性から、同じ入力(ボールで推される力)に対し、長さの3乗でたわみが増えていくことを解っていただいたら、如何に大きい面積はパワーが産まれるかの理屈も理解いただけると思います。

 
よく、誤解される面積は小さい方がブレにくいという意見に反論します。

ボレーの時に効果の出るのは、幅方向の面安定性です。

大きい面積であれば、小さい面積のラケットよりフレームが左右に広がっていることに着目。当然、グリップからフレームトップに伸びる中心軸上でボールを捕らえた場合には、フレームを回転させようという力は発生しません。(わかりやすく、フラット気味にスィングすると思って下さいね。)
 問題は、中心軸を大きく外れたオフセンターでヒットした時の話です。この時に、横方向にワイドなラケットは、端の方に至るまで、大きい反発係数を持っています。さらには、その幅方向の広がりがスタビライジング効果を発揮するため、例えば、フレームの右端に当ててしまっても、反対方向の左端側がその回転モーメントを抑制しようと働いてくれます。
 

 別の言い方では、コマを回す時に例えましょうか?径のスリムなコマと、ワイドな径の大きいコマがあったら、すぐに回しやすい(=回転しやすい)スリムなコマと、回すのに力を入れないと回しにくいワイドなコマがあったことを思い出して下さい。一旦、回り始めたら回り続けるのがワイドコマでしょうけれど、この際大事なのは、回し始めに耐えられる特性ですから。
上のスケーターが回転するために手を畳んでいますよね。手を広げたら(=大きい面積のラケットの方が)回転はしずらいという事です。
さらには、綱渡りを思い出して下さい。あれが、短いバーを持っていたなら、たぶん奈落の底に...。ぐらつきを抑制する力を持っているのは長いバーならぬ左右にワイドなラケットなんです。

ビルの綱渡り

国際テニス連盟(ITF)が、フレームの全幅に29.21cm未満という規制をしかなければならなかった事実を考えれば、大きい面積がいかにプレイヤーを有利に導くかのお墨付きとも言えないでしょうか。
 再度、言いますが、いくつかのホームページに書いてある小さい面積の方が、安定性があるという記事は、経験上か又は雰囲気で語る勘違いであって、本当にフレーム端にまで安定性を求めるならば、それはデカラケを選ぶべきです。そのために面積の大きいラケットは
存在していると言っても過言ではないでしょう。