静的バランスと動的バランスの違いは?
どちらにもバランスという言葉が付くので、この2つは混同されがちです。詳細は下の記事を見て頂きたいのですが、似てあらなるものと言えます。勿論、両者傾向は似通う部分もあるのですが、静的にはイーブンバランスではあってもトップヘビーだったりするので困ります。静的バランスの数値は絶対評価には使えないのです。あくまでも単なる目安。静的バランスの問題点は、単にグリップエンドからバランスの中心点までの距離を表すものだからです。そこには重さもいっさい影響しなければ、長さもさほど強くは関係しない。特に、トップライトに仕立てたい場合には、全く役に立たない数値です。
それに対して動的バランスは絶対的評価に使える値です。それには重さも長さも深く影響します。なので静的バランスの数値を度外視するわけではないですが、ハウディでは動的バランスに拘り、カスタマイズもこの数値を追求します。動的バランスの大小は、そのままラケットを、振ったときに重く感じる、軽く感じる絶対的評価に置き換えることが可能です。
現在、動的バランスをカタログに明記してるのはせいぜいbabolat,プリンスくらい。他社は動的バランスを計測するマシンを販売しているメーカーであるにも関わらず公表していません。ユーザーからすれば動的バランスを比較しようと思ったら、専門店を訪ねるしかない状況です。
また、動的バランスも絶対的に測定器間の差異はないのかと問われるなら、それはあります。
ハウディでは、今まで動的バランスを計測するマシンを計5台導入してきました。
前者の3台は、基準棒(ある重さ、動的バランスを提供する基準となるキャリブレーション・バー)が付属して無かったため、修理などでメーカーから代品の計測器を借りるたびに、店の基準ラケットを測定すると1〜3の誤差が生じていました。
最近の2機種は、基準棒が付属していますので、キャリブレーション後はかなり設定値を正確に合わせられると思われますが、それでもA店で計測したデータをB店に当てはめようとするのは
若干のリスクがあると思われます。
静的バランス=バランスポイント
の説明(英訳:Static Balance)
上の図は静的バランスを表しています。
別名バランスポイントとも言われます。
よく昔のプレイヤーが人差し指に
ラケットの真ん中辺を乗っけてどこに中心点が
あるかを探っていましたが
それはこの静的バランスを意味します。
グリップエンドからバランスの中心点までの
距離を意味します。単位はcmまたはmmです
当然エンドから距離が離れるほどトップヘビーと
呼び、エンドから距離が近いほどトップライトと
称されます。
定規ところころ転がる丸棒でもアバウトな測定は
可能ですが、手っ取り早くこれを知るのは
道具不要なこの方法が簡単です。
本来握るべきグリップでなく、画像のようにヘッド部を握り
グリップ部の重さを感じてみましょう。
トップヘビーなら、グリップに重さを感じず
グリップ部を簡単に水平に保てますが
トップライトならグリップ部は
ずしりと重さを感じて、水平に保つのは
厳しいと感じるはずです。
昔はこんなアナログな測定器にラケットを乗せて
丸棒を転がしてラケットを前後させ、測っていましたが
正直、目盛りを見る角度でmm単位の読み取りが不正確でした。
そこで 最新のデジタル測定器を導入!
現在の当店では静的バランスをこうして測っています
静的バランスの測定は45秒後からです
静的バランスの小から大の概念を表にまとめました
静的バランスの公式です
静的バランスしか考えない方によくある間違い
この画像はシーソーをイメージした物です。静的バランスそのものを現す概念です
TOPヘビーと感じたラケットを少しでもトップライトにしようと考えた末に
良く一般のお客様がしてしまう誤ったいじり方です。
意外に、コーチと呼ばれる方にもこれを誤解されてる方が見受けられます。
シーソーであるなら、TOP側に片寄った重さを、グリップ側に移動させようと思ったら
グリップ側に座る人が(あるいは重りが)シーソー板の端の方に移動すれば目的は達成できます。
静的バランスならそれで良いのです
そのための手段として、グリップ側に重りを付けることによってTOP側の重さをあたかも
軽く出来たかのような錯覚です。
はたして、ラケットにその思いは有効でしょうか?
気づいて頂きたいのは、ラケットはグリップを握る物であり、シーソーみたいな場所に支点は
存在しないのです。
支点があるとするなら、それはプレイヤーに握られた手のひらの中にあり、いくら重りを
グリップ側に詰め込んだところで、TOP部から一切の重りを軽減できていないことに気づいて欲しいのです。
ということは、上のシーソーのいじり方では、動的バランスの考え方ではトップライト化は不可能です。
動的バランスを理解されて初めてTUNE-UPの糸口が開けてきます。
結論から申し上げると、動的バランスの考え方としてはTOP部から重さを取り除かない限り
トップライトに仕上げることは出来ません。
ただ、そうは言っても、手元に片寄らせたことによりトップが軽くなる感覚は理論を越えて否定しません。
強いて言うなら、グリップを太目にするとか、TOP部のバンパー切除で重さを軽減、ストリングを細ゲージに変える。それが限界です。
切除と言っても2〜3gですが、動的バランスで6〜9kg平方cm軽減できます。
もっとはっきりトップライトを実感したいなら最も有効なのはラケットをショート加工することです。0.25インチ短くすれば300g,動的バランス280程度のラケットなら動的バランス(スィングウェイト)で-9kg/平方cm軽減できます。
ちなみにトップヘビーにしたい場合は、当然支点よりTOP側に重りを装着しようとされるはずですので、動的バランスでも静的バランスでもいじり方は似通ってきます。
よくやりがちな重量を増やすための方法
フレームのヨーク部(二股に分かれる部分)に重りを貼る...ここなら全体のバランスを崩さないで
重さをアップできると考える方がいらっしゃる。
静的バランスの観点からは、確かにここは中心点に近いのでバランスは崩さないとの見方は出来ます。
しかし、動的バランスの観点からは、結局握るグリップ部より先端に重りを付ける以上、スイングしたときに慣性質量は増加するのでこの方法は全体のバランスを変えず、総重量を上げる目的なら極めて稚拙である。
しかも、センター=中心軸周辺に重さを加えるのは、結果フレームサイドの重さを減少させることになるので、ブレやすいラケットになってしまうことを意味します。
そのため、ヨーク部はお薦めしません。
全体バランスを変えず、総重量を上げようとするなら、右記の方法がお薦めです。
バランスを変えず重量を増やすための方法
バランスを変えず重量を増やすための方法は経験から申し上げますと、重りをフレームのどこに貼るかにもよりますが、基本は3時9時がお薦め。トップ部:グリップ部の重さ割合は50:50よりも30:70〜35:65くらいの割合をお薦めします。それはあまりに片寄ったトップヘビーを避ける意味での必然の割合です。グリップにどうやって重りを貼るかですが最近のラケットはエンドキャップの蓋が外せる機種が多いので、そのフタ裏に貼ることもごく少量なら可能ですが、せいぜい2g以下です。しかも蓋貼り付けだと微振動の原因になる可能性もあります。
5g以上をもっと重くしたいとのご希望なら、グリップの中にシリコン充填で鉛をインサートする方法になりますのでこれはショップに任せた方が無難です!
動的バランス=スイングウェイト
の説明(英訳:Dynamic Balance)
次は動的バランスの説明です。
こちらは慣性質量を量るものです。
今や、テニス専門店には必須の測定器です。
ラケットのグリップを固定して、フレームを左右に
スイングさせ、トップに存在する質量をデジタルで表します。
単位はkg/平方㎝。1平方cm単位にどれくらいの慣性力が働いたかを
測定します。
当然、フレームの重さや、長さが数値に大きく影響してきます。
どう測るかは下の動画を見て下さい。
前半が動的バランスの測定場面です。後半が静的バランス測定です。
動的バランスの数値が小から大を図式化しました。